Kindle unlimitedで読んだら思いの外悪くは無かった快作
本作の主張を理解することができた時人は人という存在から脱却していくだろう
ザックリとしたあらすじ
トムソーヤの冒険を書いたマーク・トウェインの匿名で作られたというWhat is Man?を漫画化した作品
近代化を遂げるアメリカの時代の工場を経営する男に一人の老紳士との対話から人間とは何なのかについて意見をぶつけ合う
老紳士は人間とは機械、全ては当人の気質と環境から自動的に機械のように自己満足する選択と行動をしているだけという主張に主人公は頭を悩ませてしまう
善悪とは何か、人間とは動物以下という主張を過激に投げかけてくる一作
あらすじ・終わり
人間とは環境と気質によって決まるという主張を乱暴に投げかける本作は人間を人間と認めずあくまで機械や動物、或いは動物以下の生物だと断定している作品でありまたはそれらを肯定している
エピソードとして双子の男が一人は船乗りとなり周りの影響から乱暴な人間へと成長しもう一方がエリート学校の教師となり品行の良い大人へと成長するのだがある晩にその双子がバーで酒を呑んだ帰り道に身なりのいい男が横を通り過ぎる
それを教師の方の双子が「あの金持ちの男は毎晩この時間にこの道を歩いているらしい」と言うともう一方の船乗りの双子はそれを聞いた翌日の夜にその毎晩同じ道を歩く身なりのいい男に強盗をするという話がある
つまりこの話の主張は双子で同じDNAを持っていても経験した環境が違うだけでこうもとる行動が変わってくるという話なのだが
その原理も結果も全てそういう気質と環境でそうなるように決まったのだという
つまり犯罪者も善人もそうなるべくしてなっていて本人の努力だとかは関係ないのだという
一貫して人間の行動や選択とは機械的な反射で善や悪なんてなく環境と気質によって自動でそうなるように動いているという強引な持論を展開していく
私はこの主張を正しいとも思うし間違っているとも思う
確かにそういう虫のような人間は存在する
私の母がそれだった
母は自分の父親から暴力を受けそしてその父親はまたその親から暴力を受けていた
だから母は暴力を自分の子供、つまり私に対してしたのだと何度も何度も私は若い頃そういう説明を受けた
当時の私は到底それを納得しなかったし理解もできなかったし受け入れることもできなかった
そういう環境による影響が0だとは思わなかったが結局それに手を染めているのは自分の選択である
誰に強制されている訳でも無いし賞賛される訳でも無いただただ自分がそうしたいからそうしただけの話であった
つまり私は母から愛されていなかったことがよく分かる
殴りたいから殴るサンドバッグとして私は存在していたのだ
しかし私は特段誰に対しても暴力を振るってなどいない
つまり私はそういう環境に育ちながらもそうしなかったという選択ができる時点でそのような虫とは違うのだ
人間にはどうしようもできない環境に支配されるだけの下等な虫とそれらを超越した鍛錬を積んだ人間がいるという話
つくづく人間とはゴミに溢れており如何に大衆とは反射で生きるカスであるかがよく分かる人間不信者にとっては都合の良い一作だと言えるだろう
ただ同時に自分にできることは沢山あるのだということを気づかせてくれる内容でもあるように感じた
まとめると人間とはよく出来た者とそうでない者にハッキリと別れる
その違いは鍛錬によるものが大きい
そして黄金のような気質の精神を持って生まれた者もいれば私の母のように鍛錬を積んだとしてもどうにもならない自分の子供を殴りつけるクソ以下のゴミもいる
それが人間という生き物だという話
総評
評価は5段階中の4
他人や人間を見下したい人にとっては筋の通る話が多く納得もいきやすいので読む価値はあるように思う
ただ例題が少々強引なのでかなり解釈や根拠が大雑把だなと感じる一方で本当に頭の悪い人なんかは反射で生きていると言っても間違いがないし何なら頭のいい人ですら判断力が落ちてる際は虫のような反射の行動を取るのでこの本の主張とはほぼ間違いはないと言っていいと思う
ただその場合本当に自分と関わる人の選別が如何に大事なことと自分にかける鍛錬や環境作りがどれほど大事かが分かるので偏見がかなり強いが恐ろしい内容である