依然何も望まない

俺は何も望まないからよ

何も望まない

己の幸せだとか世界平和だとかそういうのは本当望まないからよ

望まねえから

望まねえからなんとかならねえかな

そのあれだ

痛みを感じないだとか早く死にてえだとかそういうあれでもねえ

例えばそうだな

あの、あれだよ

俺の記憶を全部消してくれねえか

 

ああ、それが無理ってんなら

やっぱ望むことは何にもねえなぁ

 

じゃあそれを引き継いだまま生きるとしよう

でももうクリア後のデータみてえなもんなんだよ

知り過ぎる分かり過ぎるってのはどうもよくねえみてえでな

まぁ周りが猿みてえに見えちまう

誰かの言うことが全部間違いに聴こえるもんだからよ

そもそも誰かと関わるなんてことがなくなっちまう

まぁそれでなくても関わる利はねえんだけどよ

 

やっぱりそうだな

ちょっと普通じゃねえんだ

同じように見えないし同じように感じない

東京生まれの知る海と沖縄生まれの知る海なんて全然ちげえだろ?

そんな感じだよ多分

 

だから俺が響く話と俺以外の人間に響く話ってのは全然にちげえ

つまりそういうことなんだよ

昔爺さんが手術で入院してたとき俺は何本か映画のDVDを借りてやった

俺が大絶賛する3時10分、決断の時を爺さんは退屈で全部観れなかったと言った

ショーシャンクの空には面白かったらしい

俺からいわせりゃあんなのは大衆娯楽だよ

ドラえもんとかと同じそういうおとぎ話だ

 

だからそういう見てきた海がちげえんだ

俺と爺さんとでは

俺は爺さんの海じゃピクリとも響かねえ

だからそういう世間の流れというのがあるんだろうぜ

しょうもなく浅いものしか知らないアホばかりな世間という概念がある

正そうにも正せんわな

どうしようもない差や溝がそこには確かにある

見てきた海が違うんだよ、何もかも

持って生まれたものの差もあるかもしれねえが

どうだろうな

環境差が1番でけえんじゃねえか?

その辺の検証なんざどうでもいいけどな

 

何が言いたいかと言えば

そういう社会だよ

そんな俺に何を望めってんだ?

もし神様がいてもできることとできねえことがあるのはハッキリしてるだろ

どうしようもできねえ、そしてそれが運命だ

運命に抗うことなんざ神にだってできねえ

え?だってそうだろう?

もし神がいてよ、パパスの死を回避できんのかい?

できねえだろ?なにをどうしたってそういう運命だからだ

パパスは死ぬんだよ、必ず

 

じゃあどうするか

そう、運命は変えられない

もう大体に人生ってのは決まってしまっている。今後それがどうなろうと

大筋を変えようと何をしようと根本はなにも変えられない

俺と俺以外の海とで完全にそれは分断されている

俺がどうなろうと何しようと変わらねえ

じゃあどうすんだその猿の惑星に落とされた俺は何が一番だ、何がモアベストだ

タクシードライバーは反社を殺しまくったというおとぎ話

ファイトクラブは高層ビルをぶっ潰しクレカの明細を消し飛ばしたというおとぎ話

じゃあ俺はなんだ

俺はそんなもんくだらねえって思うぜ

何も変わらねえよ

 

そう、結局この虚無からは何をやっても逃れられない運命にある

思うに地道にいくしかねえんだ地道に人里から離れ誰とも関わらず

そうやって生きていく

それしか手段も方法も存在しねえんだ

という身も蓋も無いお話

だが最も正しいつまらない話でした

ではまた