「チッ・・・」
「今日もスロで5万も負けちまった・・・」
このままじゃ眠れねえよ・・・俺はどうしたらいいんだ・・・
憂さを晴らそうにも金はたった今負けちまってねえし・・・
全部この不況が悪いんだよクソがッ!!!
「関本アベレージヒッター・・・上原ノビ2・・・」
ん・・・?なんだあいつは?信号待ちのとこでブツブツ言いやがって・・・
「コマルミ・・・絶対に許さない・・・」
マジで訳がわかんねえよ・・・段々ムカついてきたしこいつをボコって晴らすとするか
「おい、テメエさっきから何をブツブツ意味不明なことつぶやいてんだよ!」
「え?」
男はキョトンとした顔で返事をすると体を俺の正面に向かわせ話始めた
「すいません・・・生活を切り詰めてたらイライラしてしまってつい独り言を・・・」
なんだ、こいつも金がないのか。ならしょうがねえ金のないよしみで許してやるか
「お前も金がないのか。馬か?ボートか?スロか?」
「いえ・・・お金はあるんですけど・・・」
なんだこいつは、訳が分からねえ。金があるのになんで生活なんざ切り詰めてんだよ
「なんだ?最近はそういう修行僧的なライフスタイルでも流行ってるのか?」
「ハハハ、違いますけど結構それは本質に近いかもしれないですね」
気持ち悪い笑い方だな。見るからに友達や恋人もいそうにいない典型
寂しい人生を送ってる負けぐ・・・ってそれは他人のことを言えた柄じゃねえな俺も
「じゃあなんでそんな生活を送ってるんだ?」
「いいですよ。教えますんで僕の家に来てください」
案内され着いたのはワンルームマンション
「狭いですけどどうぞ」
「ああ」
「それで」
「どこから話しましょうか」
そう言われてじっと考える。こいつは一体何をどう切り詰めて何をどう生活しているのか
台所を見た限り自炊はしているのだろう。確かにそうすれば生活費は抑えられるかもしれねえ
だが支出ってのはそれだけじゃねえ
例えば俺のギャンブル。遊興費だって立派な支出だ
まずはそこから聞いていくか
「お前普段は何して時間潰してんだ?」
「ゲームですね」
「ゲームか・・・」
あの6年毎に新機種が出て周辺機器その他に7,8万は平気で飛んでいくゲームだと
高くはないが安くもない。PCという手段もあるが結局は最新の作品を追えばパーツの買い替えで費用は同じかそれ以上に嵩んでいく
「ゲームなら俺も昔はやってたから分かるがそんな安くないだろ」
「安いですよ」
「じゃあテメエはなにをやってんだよ」
そう言うと男はニヤリと笑みを浮かべ収納スペースからゲーム機を取り出した
「お前それは・・・」
「ククク・・・そう、PS2」
「いや、それは知ってるが・・・」
PS2が発売されたのは2000年3月4日になり18年も前の代物
「お前そんな骨とう品で遊んでんのか・・・」
「ええ、結局これが一番なんですよ」
そういうと男は電源を入れ懐かしいプレイステーションのロゴが画面に映される
「っておい、これブラウン管じゃねえか!」
「よく気づきましたね。そう、それもソニートリニトロンのフラット型。これを2000円で手に入れられたのはラッキーでした」
「あぁ・・・そうか・・・」
「確かに綺麗な気はするけど・・・」
妙なこだわりを語り終わると男はその後ひたすらパワプロをし続けた
確かにこりゃ金かからねえわ
完