かつて生の絶望を乗り越えた男の話

私は10代の頃本気で死にたいと思っていた

苦しくて苦しくて生きてても何も楽しくなくて今すぐにでも安楽死をしたいとずっと思っていた

安楽死でなくても銃と弾があればそれを自らのコメカミに押し込んで遊底を引いていただろう

その当時に読んでいた漫画のヒミズにえらく共感したものだ

自分は生きる価値がない

誰の目からも明らかなその事実を自らが受け入れるのに抵抗はいらなかった

ヒミズの主人公は最後、知り合いのヤクザに銃を洗濯機の中に置かれてどうするかを自分で決めろなどという意味不明であり得ない展開となりそのまま次の日ヒミズは自らを撃って死ぬというオチだった

私もそういう最後を10代で送るべきだったと今でも思う

ただ私の手元には銃がなく仕方なくこの歳になるまで生きながらえていた

なぜ私が死ななかったかと言えば借りっぱなしが癪だったからだ

死にたくなかったというより借りを返さないことが嫌だった

与えられっぱなしの貰いっぱなし

それが私はすごく嫌だった

だから親に300万の金を渡し家のローンの返済に初めて就職した会社で働きまくり親に金を渡した

別にそれがすごいとか意味があったとか何かがどうとかは全く思わない

ただ必死だった

このまま何も為さずに平然と生きていられる自信がなかった

いつか返せばいいなどとは思わない

返せる内に返すが私の信条だ

私が絶望から抜け出せたのは単なる借りを返すことのみだった

そして20代半ばとなり相も変わらず私は何もやりたいことも社会経験も資格も学歴も友人知人も何もなかった

地元での仕事も半年と少しで辞めこれ以上選択肢の少ない地元で働くことの限界を感じた私は祖父から100万円を借りて東京へと出た

今から思えばそれすら出来ずに勇気がなく地元から出られない人も沢山いたとは思う

なんとか安アパートと契約して東京に移り住み適当に求職して働きそこで馬鹿みたいに働いて貯金を作り2年振りに地元へ帰った時祖父に借りた100万円を返済した

その時初めて100万円の厚みを知ったけな

新札じゃなかったけど

だがどうでもよかった

相も変わらず私は貧乏人なままだったのだから

働いて働いて何度も働き過ぎて病気になりフラフラとなり周りから「アイツはおかしい」などと言われながら死ぬ気で生きてきた

いつ死んでもいい、いつくたばってもいい

こんな苦しい人生ならば何の未練もなく1秒先に死んでも悔いなんかないと思って生きていた

私にとって人生とは生きていて良かった時などほとんどない

そして同時にこう思っていた

「俺は絶対に正しいんだ。俺が正しくなきゃ何が正しいんだ」と

それが力だったのかもしれない

自分の正義を貫いたからこそあそこまで頑張れた

非効率で無意味で虚無でただの時間の無駄使いをひたすらこなした

 

そして30代になり今となる

激動の30年だった

ただひたすらに苦しいばかりの30年

地獄しかなかった30年だ

徳川家康は8歳から19歳の12年間を人質として生きた

ビクトルユーゴーはベルギーの島に19年の亡命生活

ネルソンマンデラは27年間の獄中生活

 

そして私は30年以上を地獄の中で生きてきた

なんとも無駄な30年だ

あまりにも無駄過ぎる30年

そしてまだまだ地獄は続いていくだろう

私が死ぬ時まで

 

それで、世の中の自殺ニュースや辛いだなんだの茶番めいた話が飛び交うと私はいつもこう思う

「だったら俺と変わるか?」ってね

 

そしたらもう一切そいつら何も言わなくなると思う

何が地獄、何が苦しい

本当の地獄とは俺の中にある

そして俺はその地獄を飼い慣らしている

全てを諦めて自由だけを見つめて

死のうだなんだの言ってる場合じゃねえんだよ

そんな余裕なんざ1ミリもない

俺は今までが地獄で今が地獄で今からもこれからもずっと地獄なんだからな

だから私は自由になる

ずっと地獄であるからこそずっと自由でもある

何をやっても地獄なら

何をやってもいい自由ということだ

この世は全てが裏返し

何も得られないから全てを得られるのだ

何もかもが地獄だから何もかもが苦しくないのだ

私は自由になる

自由な猿

自由なナマケモノ

自由な闘将

全ての自由そのものになる