それでも男たちは船に乗る、な夢の話

また変な夢を見た

フラフラと僕が橋の下近くの海沿いを歩いていると

汚くて狭そうな一隻の漁船が近づいてきた

なんだか見たこともない変な船で例えるなら形状はカヌーを5倍くらいに広さを確保したもの

屋根がついている半分潜水艦に近いのに船

自分の拙いワードセンスでは上手く表現できないがそんな船がやってきたのだ

汚ねえなぁと自分が思ってその船を見ていると中から若い女の子が

「船に乗って釣りをしませんか~?」と声をかけてきた

そこで おっと思って船に近づくとどこから湧いたのか自分以外にも小汚い浮浪者みたいなおっさん共が船に近づき狭い船内に乗り込んでいく

自分が考えていたのはあんな狭い船内に乗り込んだら若い女の子と密着出来てドキドキできそうだと思ったからだ

皆考えることは同じだ。男の考えることなんて本当に皆変わらない、あんな汚く胡散臭いリスクしかないトラップ丸出しの船にでも男とは女の子がいれば我先にと乗り込むのだ。それでも男たちは船に乗る、というやつだ

だけどそんなに甘くは無くてまず入船するのにお金を千円くらい取られる

そして船内に入ると客室と女の子のいる部屋は別というオチ

安全策のためか女の子の部屋の扉は厳重に締められて南京錠まであったような気がする

結局我々は扉越しに女の子と会話をするしかなく10数人を乗せた船は海原へと出る

釣りは船内の窓の先から竿を出して魚がかかるのを待つだけ

船内の客席はなるべく女の子の部屋の扉に近い位置に座るという縄張り争いがあったり釣った魚を外の窓越しに女の子に見せられる席にいようとしたりした

そんなこんなをしていると夢の視点は自分から女の子へシフトし女の子視点は厳重に閉ざされた部屋から始まる

先程のシーンからの繋ぎのようで女の子は釣りなどせずバイトでこんな呼び子みたいなことをしているらしかった

設定的には15年くらい未来の話で家がさほど裕福でなく稼げる仕事も無いらしかった

汚い室内で女の子は退屈そうに時間を潰していたが船の揺れで気分が悪くなり戻してしまう

そんな苦しそうな様子の女の子を船内の男達は皆一様に「大丈夫かー?」などと心配をする

女の子は苦しそうながらも仕事を全うし船は帰路につき全員が船から降りる

すると客から女の子へ釣った魚が大量にプレゼントされるのだがそこでまた変わった場面転換が起こる

釣った魚以外にも女の子は誰からもらったのか知らないがかなり人に懐いた行動がカワイイ猪がいたのだ

女の子が「これ…どうすればいいんだろう…飼う訳にいかないし…」みたいな様子で戸惑っていると客の中の誰かが「俺は猪を絞めて捌けるぜ」と名乗りを上げる

巨大な鎌のようなもので猪の左の首筋をサクッと斬ると猪はバタリと横に倒れた

かなり弱々しい鳴き声をあげて苦しそうだった

続いて右の首筋を同じようにサクッと斬られる

次は頭を鼻筋から縦に斬られた

これは死んだなと誰もが思っていると猪はフラフラと立ち上がった

それを見て誰かが「こいつは食用に贈られたんじゃないんじゃないか?」と言う

「こいつが、こんな状態になって生きてるのは、人を信じてるからだよ」と続ける

「人を信じてるからまだこんなになっても生きようとしてるんだ」と説明する

夢の中なので自分はそれに妙に納得すると途端に感情が堰を切って流れ出る

自分は何かとんでもないことをやったのではないかという罪悪感と悲しさが一斉に溢れて止まらなくなる

猪が、あんなにカワイイ猪を俺達は殺したのかという気持ちでいっぱいになった

僕はそこでずっと延々と泣いた

周りはもう済んだことだししょうがない、せめて食べて供養しようぜという流れになっているが僕はそれを拒んだ

もう一生肉なんて食うものかとベジタリアンのような誓いを心に立て

ずっとこの罪を背負っていくんだなと思っていたところでうなされながら目が覚めた

 

「嫌な夢だった…」と寝起きに開口一番に言うと胸にまだ罪悪感は残っていた。

 

本当になんだろうね

一体我々は何で、何様なんだろうか

一体俺はこの世の何を知っていると言うのだろう

分からないことばかりでときどき何が正しいのか分からなくなるんだ

何が悪で何が正義かなんて使い古された言い回しをするけど

俺はただ誰も不幸になって欲しくないだけだ

誰も罪を背負って欲しくない、誰もが清くなんて

そんなのは無理か

ならば前も言ったが俺だけが潔白でいよう

俺こそがオールホワイトでいよう

後ろめたさなど何もない

そんなキショい生き方をし続けよう

そう思った。