実家の犬が亡くなった

昨日から実家に帰省し家族と久々に再会した

手紙でそれを知ってはいたのだが9ヵ月ぶりに会った犬は自分で自立できないほどに弱っていた

時折苦しいのかボケてしまっているのか呻くように鳴いたり吠えたりする

素人目にももう先が長くないことがハッキリと分かるくらい満身創痍だった

 

久しぶりに首を揉んでやる

かなり筋力が落ちているのが分かる

次に首の下を撫でてやるといつもと同じような反応なので安心する

夜の餌もいつも通りのメニュー

食欲は旺盛でいつもと変わらずほとんど平らげた

 

自分は死にかけの犬を見て「俺はお前に何もしてやれなかったな。お前はあんなに俺と遊んで俺を助けてくれたのに」と思った

その翌朝、つまり今日の早朝に犬は息を引き取った、14歳だった

まるで自分を見て安心して逝ったかのようなタイミングだった

 

俺は何もしてやれなかった

俺は何一つできやしない

お前のおかげで俺が幸せになったよとも報告できず

お前のおかげで生きて良かったとも最後まで報告できなかった

 

俺はたまらなくそれが死ぬほど悔しくてただ悔しくて仕方ない

情け無くて申し訳が立たなくなる

一体あいつは何のために俺と関わってくれたのか

何のために生まれてきたのか

何のための一生だったのか

それを台無しにしてしまったのは俺じゃないの

そう思えて仕方ないのだ

所詮自己満足かもしれない

だが名誉に関わるのだ

このままで終わってしまっては

あいつはただのゴミ人間に飼われた犬で終わってしまうのだ

俺は勝手にそれが申しわけなくて仕方ない

ただの独り善がりだが

 

それでもあいつは待っていてくれたのだ

こんなゴミ人間が家に帰ってくるのを筋力が弱り自立もできない、賢くプライドの高いあいつがボケてしまっても生きて待っていてくれたのだ

小さな体で死ぬのを必死で抗い生きていてくれた

 

亡骸を前に名前を呼ぶもなんの反応もない

死んだのだ

あの賢くプライドの高いあいつが死んだ

初めての散歩でリードをつけて散歩をしようとすると全身で地面に踏ん張って散歩を拒んだ

ただの小型犬が大人の人間に全力で反抗した

こちらも力づくで散歩に出ようとしたがとうとう根負けしそれからあいつの散歩はリードはなしだった、あいつはその日から自由を勝ち取ったのだ

どんな相手に対しても自分の意志を曲げない反骨精神にあふれていた犬だった

今回もその強い精神力で生き延びていたのだろう

体もろくに動かせないストレスフルな状態でも生き抜き見事に目的を完遂した

すごい犬だ

すごい犬だよお前は

俺なんかお前の足元にも及ばねえよ

お前にはどう足掻いたって敵わねえ

お前の意志の強さは半端じゃねえ

俺なんかちょっと嫌なことがあったらすぐに折れそうになっちまう

トラウマだなんだって言って塞ぎこんでしまう

お前はすごいよ、お前はすごい

なんで俺なんかが生きなきゃいけないのかわかんねえ

情けねえみっともねえ恥ずかしい

だからどこかでまた会おう

今度は俺が犬でもいい

いや俺が犬がいい

もう俺はお前を看取りたくないからな

またな

本当にお疲れ様でした。